ダイアログ inドイツ/暗闇ディナーと無音の世界
2017.06.08 17:36
笑顔いっぱいの未来を創るためのヒントを求めて
MERRY PROJECTはこの春「MERRY IN GERMANY」の旅に出ました!
経済大国としてヨーロッパの発展をリードしながらも、
長い歴史の中で育まれた豊かな文化や環境を大切に守る国。
古くから、日本との関わりも深く、日本人と共通項が多いとも言われる
ドイツの人々は、どんな「MERRYのカギ」を持っているのでしょうか。
今回の「MERRY IN GERMANY」では、ドイツで発見した
MERRYの秘訣を数回に渡ってお届けします!
第1回は、ドイツ発祥・暗闇のエンターテイメント
「DIALOG IM DUNKELN/ダイアログ・イン・ザ・ダーク」
で出会ったMERRYな体験について、ご覧ください。
やって来たのは、北部ドイツ。
ベルリンに次ぐ第2の都市「ハンブルク」です!
ヨーロッパ最大の港を誇るハンブルクは、
作曲家のブラームス生誕の地であり、ビートルズがデビューした街。
ミュージカルやオペラなどのエンターテインメントや
出版社・テレビ局なども集まる情報の発信地でもあります。
一方で、水と緑に恵まれた自然豊かな街でもあり、
世界遺産の倉庫街が建ち並ぶ美しい場所です。
ハンブルクに到着し、駅周辺の公園を散策していると
車いすや松葉杖を使う人たちが次から次へとやって来ました。
なぜだろう?と思い周囲を見渡すと
駅から公園に向かう道は非常に幅が広く、
長くゆるやかな坂道になっていました。
大きな階段の横にこじんまりとスロープが付随しているのが
日本の定番スタイルであるのに対し、
ゆったりとした坂道の脇に小さな階段がありました。
足で歩く人、松葉杖や車いすを使う人、スケボーや自転車に乗る人、
ペットの犬たちも…、みんなが一緒に歩ける道。
そこに、一部の人の為の特別な道はありませんでした。
そんな魅力的な街の風景を眺めて、
「DIALOG IM DUNKELN」の本拠地として
この街が選ばれた理由が少し分かったような気がしました。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、1988年に
ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏の発案によって生まれた
暗闇のソーシャルエンターテインメントです。
これまで世界39カ国以上で開催され、800万人を超える人々が体験。
プログラムの、アテンド・ファシリテーターとして、視覚障がい者に活躍の場をつくり
何千人もの雇用を生んできたそうです。
日本でも、1999年11月の初開催以降、
現在は東京・外苑前の会場と、大阪「対話のある家」を中心に開催されており、
約19万人以上が体験している人気コンテンツ。
美しいレンガ造りの建物がずらりと並ぶ道の角に
その真っ赤な入り口はありました。
扉を開けると、鮮やかな色彩が心を躍らせる
エンターテインメントな空間が広がっていました!
視覚障がい・聴覚障がいといったキーワードから
なんだか少し敷居が高そう、という印象を受ける人も少なくはないと思います。
しかし、特に日本の社会ではまだまだ凝り固まっているであろう
それらのイメージを覆すかのような、明るく楽しい
晴々とした空気に包まれたエントランスルームが私たちを待っていたのです。
博物館?
テーマパーク?
ミュージアム?
はたまた夢の世界か…!?
扉を開けた参加者たちは、そのカラフルなおもてなしに
ワクワクしながら、軽やかな足取りで
はじめの「体験」に引き込まれて行きます。
プログラム開始までの時間を過ごすエントランスには、
何やら触れてみたくなる装置がたくさん。
「この人は何をしているのでしょう?」
その問いかけの下にあるイヤホンに耳を当てると
ジャーーーーーッ
ゴシゴシゴシ
など、いくつかの音が聞こえてきます。
イヤホンの上のパネルをめくると…
「歯磨きをしている」などの答えが出て来る仕掛け。
その他にも、丸い穴のあいた大きな箱に腕を入れて
中に設置されているものが何かを当てる装置や、
ボタンを押して出て来る香りを当てる装置、
マラカスの中に入っている石の数を当てる装置など、
ゲーム感覚で、五感を研ぎすませることができました。
子どもから大人まで楽しめるアイデアがいっぱいで、
ヒゲをたくわえたマッチョなおじさんも、
夢中になってダイアログの世界を体験していました。
今回参加してきたのは
「DIALOG IM STILLEN/ダイアログ・イン・サイレンス」と
「DINNER IN THE DARK – DER KLASSIKER /ディナー・イン・ザ・ダーク(クラシックバージョン)」
の2種のプログラムです。
サイレンスで体験するのは、見えるけれど聞こえない空間での対話。
聴覚障がい者がアテンドとなり、言葉を使わずに様々な課題にチャレンジしました。
音を遮断するヘッドフォンをつけた私たちが使えるのは、
表情や身体の動き、手を使ったジェスチャーなど。
アテンドをしてくれた男性は、
表情も身振り手振りも、とにかく言葉以外の全ての表現を使って、
私たちに心の声を伝えてくれます。
全てのプログラムを終えた後、手話通訳者を介して
アテンドの男性と会話をした時のことです。
日本語の質問をドイツ語に訳し、更にそれを手話で訳してもらう私の
まどろっこしい様子を見て、思わず彼は笑い出しました。
「さっき(音の無い部屋で話していた時)の方が
よっぽど早くお互いの気持ちを伝え合うことが出来たよね!」
そう言われてハッとしました。
言葉を使わずにコミュニケーションをしていたとき、
私はジェスチャーや表情などを使って、
アテンドの彼に直接語りかけ、返事をもらって会話をしていたのに。
言葉を使った途端に、それが出来なくなったのです。
言葉って、言語って、話すって、聞くって
一体何なのだろう!?
相手と心を通わせる方法は、無限なのです。
しかし、私たちは様々な手段に恵まれるあまり
最善のコミュニケーションを選ぶことが出来ていないのかもしれません。
言葉を使わない、という制限を設けた世界で
そのことを強く実感しました。
100の言葉で語りかけるよりも、
たった1回、目を合わせてにっこりと微笑みかけるだけで
充分に伝わることがあるはずです。
「笑顔は世界共通のコミュニケーション」
というMERRY PROJECTのメッセージが、
音をなくした時間の中に詰まっていました。
続いて参加したプログラムは
「DINNER IN THE DARK – DER KLASSIKER /ディナー・イン・ザ・ダーク(クラシックバージョン)」
真っ暗闇の中、レストランで食事をするという体験です。
ディナータイムの少し前になると、
ウェイティングルームに30名程の参加者が集まって来ました。
こちらは夫婦や友人、家族などで、大人の人が中心でした。
スタートの時間になるまで、
ウェルカムドリンクのシャンパンを片手に談笑。
まるでどこかのパーティーに行くかのような雰囲気です。
時間になると、アテンド役の視覚障がい者が登場し、
参加者を暗闇の世界に誘います。
1人1本、白杖を持って声を掛け合いながら暗闇を進み、
レストランの座席を目指します。
着席した参加者に振る舞われたのは、本当に普通の食事。
美味しいディナーがコースで次々と運ばれてきます。
ただ一つ、私たちにとって普通でなかったのは
「視覚を使わないこと」だけ。
お客さんも店員さんも目を使わずに視る、暗闇のレストラン。
ウェイターさんは全員、視覚障がい者です。
たったそれだけで、いつもと同じディナーでの
全ての行動が新しい体験へと生まれ変わりました。
イスはどこにあるの?
今運ばれてきたのは、どんなメニュー?
こぼさずに水を注ぐには?
グラスはどこに置いてある?
ウェイターさんはどこに居る?
このお皿にはまだ料理が残っている?
全ての情報から視覚が取り除かれ、
空気、香り、手触り、温度などを頼りに食事をします。
盲目のウェイターたちにとっては日常的な世界。
彼らは卒なく空いた皿を下げ、
当たり前のように、真っ暗な中でお札を数えて
暗闇の中で会計まで済ませてしまいました!
まさに、暗闇のエキスパートたちです。
MERRY PROJECTが、暗闇のエキスパートに出会ったのは昨年のこと。
日本版「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の皆さんと
イベントでご一緒した時のことでした。
外苑前のダイアログ会場で、暗闇体験に参加したとき
アテンド役として案内をしてくれた「むらちゃん」
という男性に出会い、イベントのMCを務めていただきました。
その時の新鮮な感覚が忘れられず
ダイアログの本拠地であるドイツに乗り込んだのでした。
「DIALOG IM DUNKELN」のロゴマークは、
赤と黄色を重ねて生まれたオレンジ色をベースに。
「DIALOG IM STILLEN」は、
青と黄色を重ねたみどり色をベースにした
カラフルなデザインになっています。
このデザインには、文化の違う人たちが混ざり合い、
新しい色を生み出すという意味が込められていると伺いました。
まさに、今回私たちが出会った人たちと過ごした時間は、
これまでに見たことの無かった美しい色をしていました。
サイレンスやディナー、そして遊び心満載のダイアログな空間
たくさんの経験をさせていただいた1日でしたが、
ひと言だけ、一番の感想を問われたならばこう答えます。
「楽しかった!」
視覚や聴覚の障がいについて、頭で理解することは
本やネットを通しても出来る学びですが、
ここで感じた「楽しかった」という気持ちは、
それらの学びを少なからず体得できた証なのではないでしょうか。
違う人と出会い、知らないことを知る。
それはこの上なく楽しいこと。
違いを持った人と交わることは、
難しいことのように思えるかもしれません。
しかし、どんな人に出会ったときでも、
共通のコミュニケーション方法を探して挑戦して
そこで生まれた対話の中から
自分と自分の共通点や、自分とは異なる点を発見して認めることで
相手との距離はグッと近くなります。
そのファーストアクションが「笑うこと」なのでしょう。
「DIALOG IM DUNKELN」のみなさんから、
素晴らしいMERRYのカギを教えていただきました!
日本でも、ダイアログ体験が出来ますので、
みなさんも是非参加してみてください。
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