中国新聞・ジュニアライター発!笑顔の傘に平和の願い

中国新聞・平和メディアセンター/ジュニアライター発!
「NPO法人MERRY PROJECT 水谷孝次/笑顔の傘に平和の願い」
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?junior=2022-18

 世界各地で子どもの笑顔を撮影(さつえい)し、発信している東京のNPO法人メリープロジェクトが、広島市中区の原爆ドーム近くで撮影会を開きました。代表のアートディレクター、水谷孝次さん(71)に活動を始めたきっかけや思いを聞きました。

 水谷さんは名古屋市出身で、森永製菓(もりながせいか)「ウイダーinゼリー」などのロゴやテレビCM、ポスターなど多くの広告デザインで知られています。お父さんが戦争中に耳に大けがを負(お)っていたため「幼い頃から父の『耳』代わりのように生き、戦争の痛(いた)みを感じていた」といいます。「自分が笑うと周りも明るくなる」と考え、メリー(幸せ)な笑顔を集めようと1999年から中国やアラブ首長国連邦など35カ国で計5万人を撮影してきました。

 写真の一部は傘(かさ)にプリントします。たたんでどこにでも運べる上、何度も開いて展示(てんじ)に使えます。地球にやさしい展示方法です。

 広島での撮影会は、ロシアのウクライナ侵攻(しんこう)がきっかけです。「笑顔と平和のメッセージをヒロシマから世界に届けたい。核(かく)の傘でなく、笑顔の傘を」と市民の参加を呼びかけました。

 斎田美枝子さん(41)=広島市中区=は11カ月の娘希実ちゃんと参加しました。「被爆地の広島に住み、平和の大切さを感じている。協力できてよかった」と話しました。

 ジュニアライター6人も写真を撮ってもらいました。「平和の『ファースト・アクション』は笑顔」と水谷さん。優しく声を掛けながらシャッターを切ります。最初は硬(かた)かった表情が自然と笑顔になりました。

 笑顔の写真は2008年の北京五輪開会式でも使われました。今後、広島で撮影した写真も国内外で披露(ひろう)するそうです。ホームページはhttp://www.merryproject.com(高3桂一葉)

(2022年11月28日朝刊掲載)

[取材を終えて]

 メリープロジェクトの皆さんからは、「子供の未来を守りたい」という強い想いと優しさが感じられました。傘にプリントされた世界各地の子どもたちの満面の笑みは、見ている側も笑顔にさせるデザインでとても印象的でした。撮影者の水谷さんが、モデルが自然に笑顔になれるように楽しい会話をしながらシャッターを切っているのが印象的でした。子どもたちの大きな笑顔は、そういった小さな工夫から生まれているのだと納得できました。水谷さんは更に、「笑い」とは人間の叡智であり、子どもたちには世界を動かす強い発信力がある、と語っていました。

 私はこれまで平和学習を続けてきた中で、「子ども」に焦点をあてた話題に触れたことがあまりなかったので、今回の取材は新鮮でした。確かに、常識や固定概念に縛られた大人たちに比べ、純粋で素朴な子どもたちの発想は、世界に新たな視点をもたらしてくれることがあります。この度の取材を通して、子どもの率直な想いを尊重できる大人になりたいと思いました。(高3佐田よつ葉)

 取材をする中で、水谷さんの「笑顔はファーストアクション」という言葉が特に印象に残りました。どんな小さな笑顔でも、それが自然と徐々に伝わって皆がまとまり、いつか世界の平和にまでつながる。笑顔が平和への第一歩だ。という考えは、今までとは異なる視点で新鮮だなと感じました。

 また、今まで35ヶ国、5万人以上もの笑顔を撮影し、彼らにとっての楽しいこと(merry)を知ってきた水谷さんを尊敬しました。本当の笑顔を撮りたいという強い意志がなければ、なかなかなしえなかったことだと思います。水谷さんが笑顔を撮り発信し続けるように、ただ過去を悲観するだけでなく、未来にどう活かしていくかを考える必要があると感じました。

 将来、私も周りの人間が笑顔になれるような環境をめざしたいと思いました。そのためにもっとたくさんの人を取材して、どのような環境なら笑顔になれるのか、どのような状態が平和と言えるのかを聞いて学んでいきたいです。(中3谷村咲蕾)

 今回の取材で「笑顔」や「merry」について考えを深めることができました。この社会で起きているマイナスなことは全て笑顔がないことが問題なのだと気づきました。笑顔の中でも子供たちの笑顔というのが今、そして未来につながるということを水谷さんは仰っていました。そこで、私たちジュニアライターも笑顔の撮影をしてもらいましたが、日常的な会話をしながら自然な笑顔を引き出す、というのがいい笑顔の秘訣なのだと感じました。また、取材中、笑顔の写真を撮りに来られた家族がいました。

 このように成長記録にも世界の平和にもなるようなプロジェクトはなかなかないと思います。より多くの人がこのプロジェクトを知り、参加して笑顔の力で世界を平和にして欲しいです。(中2山代夏葵)

 これまで自分は、「笑顔」ということをあまり意識していませんでした。笑顔が何かにつながったり、動かしたりするとは思っていませんでした。しかし、今回の取材で笑顔の傘という存在を知って、笑顔を増やしていこうと思うようになりました。

 メリープロジェクトの方々は、笑いの力で世界を平和にするという思いをもたれています。取材の中で、これまでメリープロジェクトの中で撮られた多くの写真を見せてもらいました。その写真には、外国の子供達の笑顔がたくさんありました。

 世界の子供達が笑顔で幸せそうなのを見ると、自分も幸せになってきます。世界が笑顔で繋がっているというのはこういうことなのかと思いました。世界の笑顔を一つでも増やせるように、近くの人からでも幸せにしていきたいです。(中1川鍋岳)

 今回、ジュニアライターとして初めて取材活動を行いました。この取材をするまでは、メリープロジェクトという活動を知らなくて、メリーだから結婚か何かかと思ったら、内容としては、世界中の人々の笑顔で平和を創っていくというものです。取材相手は、この活動を立ち上げた水谷さんと、メリープロジェクトに参加するべく平和記念公園に来られた3人の方々。

 特に、水谷さんにはこの活動への想いをとても詳しく熱く語っていただきました。水谷さんが幼いとき、世は戦後の辛い時期でしたが、水谷さんが笑うと家族も笑顔になったことから、子供ながらに笑顔というものは本当に素敵で、力を持っていると感じたそうです。その、三歳のときに感じた「平和に関わる仕事をしたい」という想いを大人になって実現させているのは並大抵の想いではなかったのだろうと思います。

 しかし、大人になってすぐにこの活動を立ち上げた訳ではなく、初めはデザイナーとして活躍されたそうです。多くの賞を受賞して、デザイナーとして成功はしたものの、どこか満たされない、幸せではないという違和感を感じ、25年前に、平和に関わる仕事をしたいと改めて強く感じ、メリープロジェクトを始めたそうです。

 その活動でもっとも印象に残っているのは、あるスラム街で写真撮影を行ったときのこと。そこで撮影をした女性は最初、私にとってメリーなことなんて無い。スラム街のこんなところで笑ったこともないと、とてもこの活動には結び付かない面持ちだったそうです。

 しかし、水谷さんの熱心な説明などで徐々にこの活動への意欲が高まっていき、最後には「私にとってのメリーはYouよ」と話したそうです。それを聞いた瞬間、これまでの賞などが急に馬鹿馬鹿しく思え始め、これこそが自分の仕事だと強く感じたそうです。こんな風に、幼いときに感じてことを追いかけ続け、実際に満足のいく形として実現させる、そんな熱い想いの持ち主でした。(高1小林芽衣)

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